家の財布からお金を盗む子どもを緊張理論で説明する

2020.05.23 (土)

なぜ子どもは家の財布からお金を盗むのか。対策はどうすればいいのか。

 

 

犯罪に対する学説は色々あるのだが、その中から緊張理論というのを紹介する。犯罪を個々人の生来の特性によるものとせず、その犯罪者をとりまく社会構造に犯罪の原因を求める考え。「個人というよりも、社会構造が悪いんじゃないか」というものである。

 

 

緊張理論とは、緊張状態が犯罪を引き起こす、という考えである。よくアメリカにおけるアメリカンドリームが例えとして使われる。アメリカンドリームという社会における目標が犯罪を引き起こす、というのである。

 

 

社会には、構成員の多くが目標とするものある。例えば、富を得る、名声を得る、地位を得る。頭が良くなる、など。そして、これらの目標を達成するために、社会には手段が用意されていて、その手段を経て、一般的には目標を達成するようになっている。この手段とは、皆んなに平等に用意されている。

 

 

手段とは例えば、努力するとか、学校で一生懸命に勉強するとか、どこかに弟子入して技術を学ぶとか。

 

 

けれど、これらの手段が皆んなに平等に用意されているというのはタテマエで、本当はこれらの手段にありつけない人もたくさんいる。一番考えられるのは金銭的なハードルだろう。日本でだって、各家庭の金銭状況によって、受けている教育のレベルや量に差があるのは事実である。

 

 

他にも考えられるのは、努力したくてもできない、という状況だろう。たとえば身体的な問題だったり、あるいは精神的な問題だったり。自分を養ってくれている大人に理解がなく、自分がしたいことをさせてもらえない、進みたい道に進ませてもらえない、という状況も考えられる。

 

 

このような、「目標は設定されているのに、自分には手段がない」状態を緊張状態といい、一種のフラストレーションが溜まった状態だと思われる。こんなときに、犯罪や非行は行われやすいのだという。

 

 

社会で設定されている目標は目に見えるものではないが、意識するにせよ意識しないにせよ、誰もがそこに向かって生活している。あるいは「なれたらいいなあ」程度には意識している。そこに到達するために手段は、いくつか用意されていて、その手段は「誰にも用意されている」という前提に社会はなっている。

 

 

故に、用意されていない人間のことなど想定外。なぜなら、用意されていることになっているからである。周りの大人は「お前にもチャンスはある」「誰でも努力すれば」なんてことを言っている。けれど自分にはその手段が当てはまらないことがわかった。自分に手段が無いのは社会の構造上の欠陥であって、自分にはどうすることもできない。

 

 

ゴールには自分も行きたい。目標は自分も達成したい。目標を達成できれば自分もいい人生をおくれると思う。けれど手段がない。周りには手段を持っている者ばかりなのに。

 

 

だったらどうするか。黙って指をくわえて、周りの人間が目標を達成するのを傍観しているのか。そうではなく、自分も目標を達成するのだ。合法的には用意されていないかもしれないが、非合法の分野にも目を向けると、自分にも利用できそうな方法が用意されている。

 

 

というわけで、人は犯罪を犯すのである。子どもは非行に走るのである。社会的構造上の欠陥がもたらした犯罪の原因。緊張理論である。

 

 

これを家庭の問題に応用することには無理があるのだろうか。家庭の財布からお金を盗む子どもの状況に置き換えてみる。

 

 

子どもも、合法な手段では目標達成が困難だと判断したのであろう。自分の状況にフラストレーションがたまり、緊張状態が生み出されたのである。非合法な手段で目標を達成しようとすることの表れだ。

 

 

例えば子どもの周囲ではニンテンドー「どうぶつの森」が流行っている。皆んなが「どう森おもしれー」なんて言っている。どうぶつの森を手に入れれば、楽しめることは明らか。手に入れた人は、誰もが親に買ってもらっている。普通であればそうである。子どものおもちゃは親が買うものだ。

 

 

けれど、自分の親は買ってくれない。目標を達成するための手段が、自分だけには用意されていない。そんな時に、「よし、非合法に目標をつかもう」「お金を盗もう」という心理になるのだろう。

 

 

ここで「盗まないで自分(親)に言えばいいのに」とか「他の方法がいくらでもあるのに」と思うかもしれないが、子どもからすれば、手段が閉ざされているように思えたのである。大人であれば目標への道を開いているように思えるかもしれないが、子どもからすれば閉ざされているのである。

 

 

と、ここまで来ると対策も見えてくる。目標への手段が隔たっている構造を改善して、手段が構成員に平等に広がるようにするのである。子どもの緊張状態を取り除くのだ。

 

 

親にはなんでも無いと思えるもが、子どもにはなんでもあるのである。親には開けているように見えても、子どもにとってはそうではないのである。

 

 

事実かどうかはともかく、「ウチは貧乏だから」「どうせ親に話しても理解してもらえないから」「どうせ気づいてくれないから」なんて言って、当事者(子ども)からは目標に対する手段が見えていない。「平等ではない」という認識が、この理論を家庭に応用したときの重要なところである。

 

 

家の財布から子どもがお金を盗むのを知った親がびっくりして驚く時、「子どもにとっては手段が平等ではない」「閉ざされている」という子どもからのメッセージなのかもしれない。

 

 

大人としては「家の財布からお金を盗んだ」という事実だけを戒めるのではなく、子ども目線での達成するべき目標と手段を、もう一度目を凝らして見なくてはならない。

 

 

 

 


 

 

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