マートンの緊張理論でいう犯罪をなくす方法とは
マートンの緊張理論について説明します。緊張状態のことをマートンは「アノミー」と呼んでいて、それゆえにこの緊張理論はアノミー理論とも呼ばれるようです。
社会がつくり出す緊張状態のことをアノミーと言いいます。アノミーが圧力となって、人を犯罪や非行に走らざるを得ない状況をつくるのです。
どの社会にも、その社会の一員であれば、誰も憧れるような目標があります。高い地位につきたいとか、異性からチヤホヤされたいとか、お金持ちになりたいとか、自由に生活したいとか。
でもって、その目標を達成するのにまっとうな手段があります。
高い地位につくためには、いい大学に入っていい会社に就職するとか。起業して事業を拡大するとか。
お金持ちになるためには、株式投資でお金を増やすとか。貯金して貯めるとか。
異性からチヤホヤされるためには、勉強やスポーツで目立つ存在になるとか。異性に気を使えるようになるとか。
自由に生活するには、経済的に自分でコントロール可能な範囲で生活するとか。必要以上に物を買わないとか。
ですけど、これらのまっとうな手段というのは、誰にでも与えられているわけではありませんよね。少なくとも隔たりはあります。これらの手段を利用しやすい環境にある人と、利用しにくい環境にある人がいるはずです。
お金持ちの家庭に生まれた子どもは金銭面は有利なのでいい大学に入りやすいでしょうし。身の回りの近くに起業家がいれば、起業するのに必要な考え方を受け入れやすいでしょうし。一緒に住んでいる家族がストレス買いするような人であれば、本人は欲しくなくても家に物があふれるでしょう。
建前上はすべての人に、目標への門戸が開けているとは言われています。人生が望み通りにうまくいくかどうかは「本人次第」「やる気次第」とは言われています。けれどこれはタテマエで、現実には万人に同じようにチャンスや道が開かれているわけではありません。
それにも関わらず、過度に目標だけが強調されている世の中です。
SNSを開けば、お金持ちの人が嫌でも目に付きます。テレビを付けても、映っているのは容姿的に恵まれている人だけです。その社会で目標とされている理想像に近い人はどんどん露出するのに対し、それとは反対に目標とされている理想像と真逆の生き方をしている人には、発言のチャンスすらありません。目標は目標として崇め奉られるのみ。
これでは、目標を達成する手段に手の届かない人はどうすればいいのでしょうか。
お金持ちが目標だと言われている社会でお金持ちになるにはいい会社への就職が有利だし、それにはいい大学へ入学することだとしても、それに手の届かない経済状況にいる人はどうすればいいのでしょうか。
そう、ここで出てくるのが逸脱行為であって、犯罪になります。まっとうな手段で自分にチャンスがないのであれば、まっとうでない手段にでればチャンスはあるでしょう。
正統な手段で目標に手が届かないのであれば、ドロボーとか詐欺なんかの非合法手段があります。まっとうな手段で異性にチヤホヤされるチャンスがないのであれば、暴力に訴えるという非合法手段があります。
アノミーとは、ホンネとタテマエの歪みのようなものです。「皆んなが目指す社会の目標があって、それを手にする手段が公平に行き届いている」というタテマエ。「確かに皆んなが目指す目標はあるけれど、それを手にする手段が隔たっていて、中には手に入れられない人もいる」というホンネ。この矛盾が緊張状態であり、アノミーなのです。
このアノミーをどうすれば解消できるのか。犯罪を生み出す原因であるアノミーを解消するにはどうすればいいかというと、それはわかりきっていて、社会の構成員全員に、公平になるように機会をつくることですね。
社会の皆んなが手に入れたがっている目標。それを手に入れる手段。その手段をタテマエ上のことだけでなく、実際に手に入れられるように(ホンネになるように)、分配することです。そうすれば逸脱行動もなくなるし、非合法な手段で目標を達成しようとする人もいなくなるでしょう。
目標をに対する道が合法的なものと非合法なものとがあって、非合法な道を進めばペナルティーを課させる事がわかっているのであれば、合法的な道を進んだほうが理にかなっています。チャンスが誰にでも転がっている、真に公平な社会を目指すのです。
でも実はもう一つ、このアノミー理論でいう犯罪をなくす方法があって、それは目標を変えてしまうことです。高い地位につきたいとか、異性からチヤホヤされたいとか、お金持ちになりたいとか、自由に生活したいとか。そんな社会の目標を崩して、他に目標を見つけることです。
そういう意味では、現代はアノミーが起こりにくい時代なのではないかと思います。あるいは、アノミーが起こりにくい時代に向かっているのではないかと思います。
既存の事に嫌気がさして、新しい生き方を探る人が出てきています。社会の構成員の多くが持っている目標とは別に、自分が心から「それだ」と思えるものを作ろうとする動きがあります。それは、単に誰かの真似だとか二番禅じということじゃなく、「たとえ自分を理解する人が少なかろうと自分はこの道を行く」という考え方で、そんな考え方そのものをリスペクトしようとする動きです。
多様性とかダイバーシティとはいいますけど、種々様々な価値観が存在して、それぞれの個人がそれぞれの目標に向かって突き進むことです。そうすれば、「あの人にはチャンスがあるのに、自分にはない」というアノミーにはならないので、犯罪は生まれなくなります。
マートンの緊張理論でいう犯罪をなくすには、目標を達成する手段を世の中に公平に分配することだけではなく、目標そのものを多様にする、あるいはそれぞれ別の目標を目指す姿勢を肯定することなんです。
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