構造主義とは「鬼滅の刃」でいう無限城だ〜現代文読解のテーマとキーワード
「難しい文章を読むには、知の下地が必要である」
これがこの本のコンセプトである。
僕は好きで哲学を読んでいるけれど、この習慣が難しい本を読む際の下地になるらしい。目次には見覚えのあるキーワードが並んでいる。
第一章 「時代」の流れを把握しよう
第二章 「私」の捉え方を把握しよう
第三章 「言語」のからくりを把握しよう
第四章 「心」について把握しよう
第五章 「文化」について把握しよう
第六章 「経済」の流れを把握しよう
第七章 「社会」について把握しよう
第八章 「日本」について把握しよう
第九章 「芸術」の流れを把握しよう
この本で面白かったのは、構造を「からくり」と呼んでいることである。
私たちはつねにある時代、ある地域、ある社会集団に属しており、その条件が私たちのものの見方、感じ方、考え方を基本的なところで決定している。だから、私たちは自分が思っているほど、自由に、あるいは主体的にものを見ているわけではない。むしろ私たちは、ほとんどの場合、自分の属する社会集団が受け容れたものだけを選択的に「見せられ」「感じさせられ」「考えさせられている」。そして自分の属する社会集団が無意識的に排除してしまったものは、そもそも私たちの視界に入ることがなく、それゆえ、私たちの感受性に触れることも、私たちの思索の主題となることもない。
内田 樹. 寝ながら学べる構造主義 (Japanese Edition) (Kindle の位置No.282-287). 文藝春秋. Kindle 版.
これは「寝ながら学べる構造主義」という本に書かれていた、「構造主義とは何か」である。
構造主義とは、「鬼滅の刃」でいう無限城のようなものである。
僕は「鬼滅の刃」をアニメでしか見たことがなく、マンガの原作の方を読んでいない。だから浅い鬼滅の知識でしか説明できなけれど、構造主義を「からくり」と呼ぶのなら、それは無限城のようなものだ。
アニメ版「鬼滅の刃」の最終話で、鬼舞辻無惨によってパワハラ会議が開かれた場所。たしかあの場所を「無限城」というのだったと思う。
あの無限城にはからくりが施されている。空間が歪んでいるのだ。縦も横もないし、手前も奥もない。おそらく奥に向かって走ってもいつの間にか上とか下とか、別の方向に向かって走っていることになる。
だから、逃げようとした下弦の鬼が簡単に無惨に捕まってしまったのだ。逃げようとして逃げられなかった。あの無限城に入ってしまったら最後、あの空間にいる者は強制的にあの空間のルールに従わなければならない。無限城に入ってしまったら、嫌でも無限城のルールの中で動くしかない。それがあの無限城のからくりだ。
構造主義というのもこれと同じで、僕たちは嫌でも自分が属する社会のルールに従うしかない。これは相当に巧妙なもので、僕たちは自分たちが無限城の中にいることにすら気づいていないほど巧妙なのだ。
生まれたときから無限城で生活している。なぜならどこの社会にも属さずに生まれることはできないからだ。ルールを課されない世界に生まれることができないからだ。日本人としてうまれ、あるいは男(女)として生まれ、人間として生まれ、地球人として生まれている。「日本人」「男(女)」「人間」「地球人」と、僕たちは必ず、何者かでなくてはならなくなっている。
何者でもない状態で生まれることができない。なので、生まれたときからいずれかの社会(「日本人」「男(女)」「人間」「地球人」……)に属している。そして、強制的にそれぞれの社会のルールで生活している。生まれたときからそのルールを課せられているので、もはやそれが当たり前になっている。「課せられたもの」という認識がなく、それが「普通」あるいは「当たり前」だと思っている。
けれど、その社会の外の人からしたら、決してそれは「普通」ではないし「当たり前」でもない。アメリカ人からしたら日本の文化は当たり前ではないし、男(女)からしたら女(男)の習性は当たり前じゃない。犬や猫絡みたら人間は奇怪なものにしか映らないし、火星人からみたら地球人はとても奇妙な生き物に違いない。
日常から見たら、無限城のからくりはとても奇妙なものに映る。けどもしも、生まれた時から無限城の中にいたら、おそらく空間が歪んでいることが普通なのだ。歪んでいる空間に違和感をいだくことはない。無限城の中に生まれたときからいてその状況に慣れていれば、それが当たり前になる。
当たり前に思っていて違和感を感じることはない。けどそれは間違いなくルールを課されている状態である。からくりの中で生活していることになる。構造主義とは、そんな目に見えないルールのことをいうのだ。僕たちに課されている慣れてしまってはっきりと認識することすら困難なルールのことをいう。
僕たちは、自分たちが今いる日常に対して違和感を持たない。が、おそらくそれは無限城の中にいるほど奇怪なものに違いない。もしも「外」にいる人間からしたら、とてもキテレツなからくりの中で生活しているに違いない。それを「キテレツだ」とすら思わず。
そんな事をわかっていることが、難しい本を読むには必要だ、ということだろう。自分たちが見ている世界は、視点を変えて見ることができる。でもって「視点を変えて見るとこうも見える」ということがわかっていることが、難解な文章を理解するには必要なのだ。
目の前に広がっている世界には過去があって、過去の流れを把握しておけば、難関な本も理解しやすい。その過去の流れ、一歩後ろに下がって全体を眺めるような視点が、深長な本を読むには必要なようだ。
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