父親は必要なのか

2015.06.23 (火)

岡田尊司「父という病」(ボブラ社)の序章の抜粋です。

「少なくともわれわれの社会においては、父親がいなくても、子どもの生存には、ほとんど影響しないだけでなく、それ以外の発達や健康面においても、母親の不在ほどには影響しないということがわかっている。父親との愛着よりも、母親との愛着の安定性が、子どものその後の対人関係を左右することも知られている。父親との関係が悪くても、母親との関係が十分に安定したものであれば、父親からの負の影響は補われるのだ。

しかし、またく影響がないかというと、そうではない。さまざまな問題において、リスクの増加が起きるのだ。たとえば、その一つは非行だ。

平成22年の犯罪統計から、少年犯罪のピークである15歳で見ると、実父母がそろっている家庭が約6割だったのに対し、実母だけの家庭は3割を占めた。実母のみの家庭が、全体の10分の1程度とすると、母親のみが育てる場合、非行のリスクは5倍程度に増加すると考えられる。ちなみに、父親のみの家庭の占める割合は、母親のみの家庭の約4分の1で、それを考慮すると、そのリスクは、さらに2.5倍程度の上昇を示すと推測される。

つまり、母親はより重要だが、母親だけでは、やはり子どもの成長に困難を抱えやすいのだ。 」

そして、筆者は父親の役割をこう述べています。

「母親の欲望に呑み込まれてままでは、健全な成長が遂げられない。そこに、父親の役割が必要になてくる。母親の愛情のぬるま湯の中に呑み込まれてしまわずに、一人前の大人に成長していくためには、欲望に枠組みが与えられ、現実化するプロセスが必要なのだ。父親は、子どもに対して乗り越えがたい限界として立ちはだかるとともに、子どもを母親との関係から外の世界へと引きずりだすことによって、欲望を地に足のついた、練り鍛えられたものに変えていく。

たとえば、母親に対する欲望が際限のないものにならないように、父親はそれにブレーキをかける役割を果たしている。また、母親に呑み込まれるのを防ぐべく、外の世界へと連れ出す役割を果たす。こした父親の役割が、子どもがバランスよく育つためには必要だということになる。」

子どもの健全育成のためには、父親は母親をフォローしながらバランスよく育てることが大事なようです。

 

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