薄めてぼかす。犯罪や非行を防ぐ態度とは

2020.05.16 (土)

寛容さについて、である。どうやったら寛容さを持てるようになるのか。なぜ寛容についてのコラムを書くのかというと、寛容さが非行や犯罪を防ぐからである。

 

 

以前までは、非行や犯罪を防ぐ態度として、「思いやり」とか「優しさ」という言葉を使っていた。けれど最近、この2つの言葉を使うことに対して消極的になってきた自分がいる。というのも、「思いやり」や「優しさ」なんていうと、どこか品行方正のような雰囲気があるからだ。

 

 

「思いやり」や「優しさ」という言葉には、「『人に対して柔和な態度をとることがいいこと』と盲目的に信じている」のような、どこか表面的で近視眼的なイメージがある。そこで最近使っているのか、「寛容」という言葉である。

 

 

寛容という言葉は、思いやりや優しさに比べると馴染みが少なく、普段はあまり使わない言葉だけれど、その分奥深さを感じる。この寛容という言葉、使われ始めた時代はそんなに古くないようである。近代になって出てきた言葉のようだ。

 

 

哲学者であるジョン・ロックやヴォルテールが、宗教の世界で使い始めたらしい。寛容とは「カトリックとプロテスタント、お互いにケンカしないで仲良くしましょうよ。我慢することもあるでしょうが、相手を受け入れましょう。Toleranceですよ」ということ。

 

 

この「自分以外の宗教も受け入れましょう」から意味が広がっていって、「自分以外の価値観も受け入れましょう」になったらしい。

 

 

さて、非行や犯罪のない社会を作るには寛容さが必要である。では寛容さを身につけるにはどうすればいいのか。ぼくは、抽象的な視点が必要だと思っている。

 

 

「こだわらない」という意味である。何にこだわらない方がいいのか。人間がこだわるものと言ったら、具体である。もう少しわかりやすく言うと、主観である。「人間なんだから、主観以外ないじゃないか」「我々が感じるものは、すべて主観に決まっているじゃないか」と言われてしまえばそのとおりなんだけど、それでも客観を想像することが大切なのだ。それが、よく言われる「相手の身になって考える」こと。

 

 

自分自身にこだわらない。自分自身を薄めて、ぼかして、自分自身という確固とした輪郭を手でこするような感じである。自分の価値観がぼやけてきて、相手と自分の価値観が、「どっちでもいいや」「どっちがどっちかわからない」ような状態。抽象的な価値観である。

 

 

我々は、自分自身に関わりのあることには興味があるし、自分に近いものを聞いたり読んだり接したりすると共感して「そのとおりだ」なんて思うのだけれど、そういうものは大抵、自分にとって具体的である事が多い。

 

 

自分の価値観と、わかりやすく直結するのだ。たとえ難しい内容のものでも、自分の主観とリンクすれば、自分にとっては納得しやすいモノになる。自分の価値観に近いものを、選んでしまう傾向にある。それは自分に近ければ近いほど、共感しやすければしやすいほど、リンクは強固になり、こだわりが生まれてしまう。主観から外れたものを遠ざけてしまう。

 

 

「自分はこう考えているのに、どうしてあの人はわかってくれないのだろう」

「自分はこれが正しいと思っているんだ。他の考えなんて受け入れられない」

 

これは、具体にとらわれている人の頭の中である。警察官をしてきて暴力とか喧嘩、あるいはトラブルの場面に幾度となく立ち会ってきたが、喧嘩する人、怒っている人というのは、どれも自分の価値観に強いこだわりが見られる。

 

 

たしかに本人としては、自分の言動に悪びれたところはないのかもしれない。誰も悪いことをやっているという感覚はなく、むしろ良いことをしている、という感覚なのだろう。けれど、「自分にこだわっている」という時点で寛容的でなく、その時点でそれは犯罪の芽なのだ。

 

 

相手を受け入れず、自分の価値観を押し通そうとする。具体にとらわれている。ほとんどの犯罪はここから生まれる。

 

 

これは何も暴力的な犯罪だけではない。自分にとらわれることに起源を持つ犯罪は、暴力的な犯罪だけでなく、ドロボーや詐欺も具体にとらわれていることが原因である。

 

 

「ドロボーをやらなければ生きていけない」「お金を盗むしか、もはや方法がない」というのはドロボーの心理だけれど、これも浅はかな自分の考えにとらわれている。もっと広く視点を持てば、ドロボーをする以外にも、生活する方法は色々とあるものだ。

 

 

詐欺だってそうだ。良いように使われている、詐欺集団の末端の若者を見ると、具体にとらわれていると感じる。「これをすれば簡単にお金儲けができる」というきっかけで詐欺を始めているので、考えが浅いのだ。わかりやすい人参を目の前に吊るされて、向こう側を見ることができないでいる。具体にとらわれているのだ。

 

 

子どもに抽象的なものの見方を養うには、周りの大人が、抽象的な視点を持って接するしか無いように思う。大人自身が不寛容で、自分の考え以外は認めないような価値観だと、子どもにだって、狭量や不寛容が伝染してしまう。

 

 

自分にこだわらず、「自分が選択した人生の他にも、正解はたくさんある。むしろ間違えているのは自分なんじゃ?」なんて態度でいると、相手を受け入れやすくなる。

 

 

犯罪や非行を無くすには寛容さであって、そのためには抽象的な視点が必要なのである。

 

 


 

 

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