ディズニーランドを期待すると美術館もレゴランドになる。本来は巻島先輩の含蓄も含まれているのに〜ワーニャ伯父さん

2020.10.02 (金)

「舞台うらでピストルの音。続けさまにエレーナの悲鳴。ソーニャおびえる。」

—『ワーニャ伯父さん ——田園生活の情景 四幕——』アントン チェーホフ著

 

 

 

台場のレゴランドに行ったことがあるだろうか。

 

 

今もあるのかどうかはわからないけれど、5年ほど前に台場にあるレゴランドランドに行ったことがある。というのも、「面白い」という噂で持ちきりだったからだ。レゴとはデンマークの会社がつくったブランドのブロックであり、レゴランドはその子ども向けブロックでつくったレジャー施設である。

 

 

たしか本国ではレゴランドが人気らしく、「日本でも人気が出るだろう」という噂で当時はもちきりだったと思う。で、そのレゴランドが台場にできたというので、当時幼稚園だった子どもを連れて行ったのだ。

 

 

そうしたら期待はずれというかなんというか。「意外と小さいな」から始まり、「アトラクションも意外とあっさりしてるな」と思い、「もう終わってしまった」という感想とともに施設から退出してしまった。

 

 

下手な想像をした僕も悪かったのかもしれない。勝手に想像して、ディズニーランドのような施設を想像してしまっていた。とてもとても一日では回りきれないほど広くて、一日では体験しきれないほどのアトラクションが設備されていて。

 

 

アンパンマンミュージアムを想像していたら、僕も素直に「面白いね」と言えたのかもしれないけれど、いかんせん舞浜駅を降りたときの「見上げる感」をイメージしていたものだから、がっかり感に襲われてしまった。

 

 

「ワーニャ伯父さん」を読んだときの読後感は、レゴランドに行ったときの感想に似ている。というのも、僕は「ワーニャ伯父さん」をサスペンスとか、推理もの、探偵もの、ミステリーものの類だとそうぞうしてしまっていたからだ。

 

 

「チェーホフの銃」という言葉を知っているだろうか。これは、伏線を貼ることの故事である。「張った伏線は回収しなければならない」とか「回収する気がないのであれば、伏線と思われるような余計なものは貼るな」という意味が、「チェーホフの銃」には込められている。

 

 

「弾丸が装填された銃があるのなら、発砲されなければならない」「発砲する予定のない弾丸が装填された銃ならば、最初から舞台に置いておくな」とチェーホフは言ったとか言わなかったとか。

 

 

で、そんなことを調べているうちに、「チェーホフの銃」の「銃」とは、「ワーニャ伯父さん」という作品に出てくる銃だということをどこかのネット記事で僕は読んだ。今にして思えばそのネット記事事態が怪しいものなんだけれど、このときに僕は「ワーニャ伯父さん」にレゴランドのような期待を寄せてしまったのだ。

 

 

小説でもなんでも、ストーリーをつくる人は誰もが「面白いストーリーを作りたい」と思っている。ストーリーを面白く変身させてくれる技法の一つが、伏線だ。後半の山場で「そうだったのか」と読者に言わせるように、あらかじめ匂わせておく。あるいは読者から逃げられないようにするために、伏線を広げて期待を持たせておく。

 

 

ストーリークリエイターであれば追って追って、それでも追いきれない「弱虫ペダル」の巻島先輩のような存在が伏線である。

 

 

巻島先輩の言葉の数々が主人公の小野田をひ弱な存在から競技自転車レーサーに変身させたように、伏線は平凡なストーリーをハラハラドキドキさせる見事な展開に変身させてくれる。

 

 

そんな伏線に関する故事である。それが「チェーホフの銃」である。そんな伏線故事の元になった「ワーニャ伯父さん」。これは伏線が張り巡らされていて、いっときたりとも読者を飽きさせない展開に違いない。僕はそう思ったのだ。

 

 

「きゃー!」という声が響いて。ドアを開けると女性が倒れていて。近くには装填された銃が落ちていて。あるいはあったはずの銃が無くなっていて。そんなサスペンス的展開を予想していた。

 

 

 

けれど全然。蓋を開けてみれば、ページをめくってみれば、スマホのディスプレイをスワイプしてみれば、待っていたのはレゴランドだった。「あれ、こんな感じでいいのかな?」「いつになったら仕掛けが飛び出すのかな?」「メインの部分、通り過ぎてしまったかな?」そんなかんなで終わってしまった。

 

 

たしかに銃は出てきていた。けれどサスペンスに登場するような劇的な存在として、伏線として出てくる銃ではなく、酒に酔ったワーニャ伯父さんが2発ぶっ放しただけ。しかも誰が死ぬわけでもなく、誰にも当たらなかった。

 

 

チェーホフの「ワーニャ伯父さん」とは、そんなサスペンスバリバリのストーリーではなかったのだ。ディズニーランドのような、初めから最後まで訪れた者をサスペンス状態にさせてくれるようなものでは、最初からなかったのである。

 

 

そんなものではなく、もっと静かな楽しみを提供させてくれるような、子どもの頃に親に連れて行かれた美術館や博物館のような、もっと高尚で知的な楽しみを与えてくれるものだったのだ。

 

 

「ワーニャ伯父さん」も、人生の儚さを描いた作品である。ワーニャ伯父さんとその姪のソーニャが、「人生って面白くないね。だけどそれが人生なんだよね」と悟る物語だったのである。

 

 

 

勝手に想像して勝手に期待したから、「ワーニャ伯父さん」もレゴランドになってしまったのだ。「チェーホフの銃」の「銃」とは、「ワーニャ伯父さん」に出てくる銃ではおそらくないのだろう。

 

 

勝手にディズニーランドを期待すると、高尚で知的な美術館もレゴランドになってしまう。そんな教訓を得た読書体験だった。

 

 


 

 

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