非行を防ぎ、素直な子どもへ

いやあ、MRIがこんなにつらいとは思いもよらなかった。

 

 

たった今。病院でMRI検査を受けてきたんだけど客観的に見て、仮に自分に患者としての点数をつけるとすると０点だったと思う。MRIの係の人からあらかじめ「検査中は動かないで」って言われていたのにかなり動いたし、「２０分くらいで終わりますからね」って言われていたのに「あと何分ですかあ？」なんて途中で我慢できなくなって大声上げるし、固定されていた腕は検査の途中でほどくし。散々だった。

 

 

MRIっていうのは、これのこと。

 

 

（多少、古いタイプのものかもしれないけれどフリー画像なので）

 

 

人体を輪切りにして写真をとるっていう装置。これによって、体の中の悪い部分を探す。あるいは気になる部分が本当に悪いものなのかどうかを確認する。

 

 

ひと目見れば、患者的にはなんら苦のない装置だと思われる。注射のように体に何かを刺すわけでもない。胃カメラのように喉からうどんを突っ込むでもない。歯の治療のように虫歯にドリルを突っ込んでグリグリするわけでもない。それらの人体に物理的な接触を試みる装置に比べれば、いかにも草食的な装置だ。医者から「大丈夫ですからねえ」なんて言われれば、「ああ、大丈夫なんだろうな」と納得してしまうようなもの。

 

 

けれど、その草食的な見た目とは裏腹に、このMRI、とんでもないポテンシャルを秘めていた。精神的な干渉が半端なかった。物理攻撃ではなくて、精神攻撃。使徒の何番目だったかは忘れたけど、「ハーレルヤ！」っていうBGMとともにアスカの精神をヅタヅタにした使徒がいたと思うけど、あんな感じ。

 

 

というのも、拘束されているのがこんなにもつらいとは思わなかった。両腕と腰を拘束されて、狭い筒の中に入れられて頭も動かせない状態でいることが、こんなにも窮屈で精神的に犯されるものだとは思わなかった。

 

 

初めはなんとも無いと思ってた。「あの中に入っていればいいんだったら、寝てる間に終わるな」程度に考えてた。けれど、「寝てればいい」とか「横になっているうちに終わる」とか、そうでもなかった。

 

 

台に横になって、拘束されて、そこまではまだ落ち着いていられた。台が動きはじめて、僕の体が筒の中に移動していって、目の前が筒の内側の壁になった途端、「あ、これはやばい」って思った。さいわい、検査中に頭は筒を抜けていて、目の前には室内が広がっていたからどうにかこうにか頑張っていられたんだけれど、目の前が筒の内壁だったら、２分と持たなかったと思う。エヴァがプラグ無しで動ける時間も持たなかったと思う。

 

 

あそこで拘束されて横になっている時に思い出したのは、警察学校時代の柔道の授業。僕は一回、柔道の先生に目をつけられて寝技でコテンパンにのされた事があったんだけど、あの時を思い出した。あの時は初めて寝技の恐ろしさを知った。

 

 

柔道をしたことがなく見たことしかない人にとって、柔道の寝技って地味なイメージがあると思う。柔道の立ち技には華やかさとか迫力があるんだけど、それに比べて寝技っていうのはネチネチしていてどうも陰気臭い。「なんだか威力なさそう」とか「意味がなさそう」とか「攻撃力なさそう」って思うのではないだろうか。

 

 

とんでもない。柔道の寝技っていうのは、やられる方は見た目以上にこてんぱんにされる。何がこてんぱんにされるのかと言うと、精神が。

 

 

相手を動けないようにするには、上半身を抑えるのが効果的。なので柔道の寝技は、下になっている相手の胸を押さえつける。これが精神的にこたえる。実際にやられてみないとわからないとは思うけど、この抑え込まれた状態は半端ない。上半身を思い通りに動かせないっていうのは。精神的におかしくなる。この、柔道の先生に抑えられている時、僕は叫んでしまった。

 

 

先生から抑えられながら、体の自由のきかなさが襲ってきて、頭がおかしくなってしまって、声にならない声を、抑えられている間中ずっとあげてた。

 

 

ただ、それでも先生は止めてくれない。抑え込みを解いてくれない。一回ブザーがなって、「やめ」ってなった。「やっと開放された。これで終わりだ」と思って、立って先生に礼をしたんだけど、そこで先生が僕の「これで終わりだ」感を悟ったらしくて、「これで終わりだと思うな！」って怒っちゃって、次のブザーでまた寝技の稽古が始まってしまった。

 

 

まさに地獄。MRIをやっている間に思いだしたのは、この警察学校での寝技の苦しさだった。MRIっていうのは、まさにそんなイメージ。上半身を動かせない。声を上げても助けてくれない。時間がすぎるまで拘束の苦しみを味わわなければならない。

 

 

それと、プールのウォータースライダーにも似てると思った。僕ってウォータースライダーが苦手なんだけど、それっていうのはスピードが怖いわけではない。今回のMRIをやってわかったんだけど、あの暗がりに入ることがウォータースライダーの恐怖の正体だったのだ。

 

 

「一度入ってぬけられなかったらどうしよう」みたいな。ウォータースライダーも、トンネル状になっておらず、もっと開放感があるものだったら、「チャレンジしてみよう」って人がもっと増えるだろうに。

 

 

そう言えば、MRIを終えて病院を出てきてスマホを見てみたら、「女子高校生をワイヤで拘束、監禁　会社経営者を逮捕」というニュースが飛び込んできた。身体を拘束するっていうのはやっちゃいけないよ。精神がズタズタにされてしまう。