世にも珍しい、警察官による世直し論〜人に優しくなれる発想法

2019.10.10 (木)

 

「世直し論」と言ってしまっては大袈裟だろうか。政治家をはじめ、世の中に影響力を持つ人たちが、声高に叫んでいる「こうすれば日本はよくなりますよ」「こうすれば世界は生活しやすくなりますよ」という、世の中を正すための、直すための論理。それと同等なものを、この本には詰め込んだつもりだ。

 

 

本であるから、書いてあるのは私の意見である。私の主張である。私の主観でもある。だから、この本を読んで「くだらない」と思う人もいるだろうし、「言っている意味が分からない」と思う人もいるかもしれない。あるいは、「確かに」と共感してくれたり、「なるほど」と新しいものを見つけてくれる人もいるかもしれない。それは仕方がない。けれど、私はあくまでも優しさこそが世の中を正しい方向に持っていくのには必要だと考えている。それは、近いところで「明日、食べていくにはどうすればいいだろう」「職場の人間関係をどうすればいいだろう」という視点でもそうだし、遠いところで「地球の環境を守るにはどうすればいいか」「宇宙という膨大な時間の中で人類は…」という視点でもそうだし。どの距離、どの抽象度で切り取ろうとも、世の中に必要なのは優しさであり、寛容さなのだ。

 

 

警察官の本音というのを聞いたことがあるだろうか。紺色の制服を着ている警察官でもいいし、私服姿の警察官でもいい。彼らが普段、何を考えて何を見ているのか。聞いたことがあるだろうか。テレビでインタビューに答えている警察官幹部はもちろん、テレビ番組の警察24時でさえ、本音を流してはいない。テレビで警察の本音を探ることはできないのだ。

 

 

警察という職業は、本音を隠す職業だと言ってもいい。なぜか。それは、本音を隠した方が仕事がしやすいからだ。警察という職業は、イライラの矛先、怒りの矢面に立つ仕事である。警察も人間なので、イライラや怒りをぶつけられれば内心穏やかでないが、穏やかでない内心を見せることは、イライラしている相手や怒っている人間にとって、火に油をそそぐようなものだ。イライラしている人間からイライラをぶつけられて「こっちもイライラする」のような態度をとったのでは、お互いに余計に燃え広がって収拾がつかなくなる。だから、内面を見せることなく、本音を表に出すことなく、感情を顔に出すことなく、その場を終わらせるのだ。別に「怒らないことが正義だ」とか「優しい心こそが愛だ」などというつもりは毛頭なく、怒りやイライラを表に出さないで、その場をやり過ごすことで、仕事を早めに終わらせて家に帰ることができる。

 

 

大上段に立って遠い人類の未来を見ているわけではなく、ただ身近なメリットを得る、身の回りの出来事を有利に進める、という意味において、「イライラしない」「怒りっぽくならない」という態度は有利なのである。

 

 

「イライラしない」とか「怒りっぽくならない」とは、具体的な出来事から導き出した、普遍的な意見だと思っている。そしてさらにそれを本書では、明日使える具体的対策としても落とし込んでいる。

 

 

警察官が日々相手にする、酔っ払い、チンピラ、交通違反のドライバー、交通事故の当事者、職務質問の相手。そんな日々の仕事を、一つ一つ具体的に見ていったのだ。酔っ払いはどうして喧嘩っ早いのか。チンピラはどうして自己主張が激しいのか。交通違反のドライバーはどうして自分の違反を理解できないのか。交通事故の当事者はどうして自分ではなく相手が悪いと思い込んでいるのか。職務質問される人はどうして状況を客観的に見ることができないのか。

 

 

さっき起こったこと、前回起こったこと、数ヶ月前に起こったこと。それぞれの出来事を具体的に思い出して、そこから導き出したのが「ステータス感や過去の慣習などの具体的なものにとらわれない」である。それぞれの出来事に当てはまる「要は何なのか」「つまりどういうことか」「一言でいうと何なのか」がこれである。共通点ということだ。

 

 

この「ステータス感や過去の慣習などの具体的なものにとらわれない」がコアメッセージであり、そこからさらに明日使える具体的な方法に落とし込んだのが、「本を読む」とか「一人になる」とか「自分の本音を意識する」ということである。抽象的なコアメッセージを実践するための具体的な方法である。もちろん、コアメッセージという幹から伸びた枝葉であり、数あるうちのいくつかでしかない。全ての人が「こうせよ」というものでもない。あくまで一例である。読者の方がコアメッセージを自分ごとに落とし込むことができたのなら、読者の方自身が独自に具体的方法を作ってもいいと思うし、それが本来の姿だと思う。

 

 

「イライラは良くないし、できればイライラしないで生きたい」と誰もが思っているはずなのに、多くの人が目の前の感情を優先してしまい、諦めてしまっているのではないか。すぐに頭から過ぎ去ってしまう「イライラは良くない」という感情。本書は、それを頭にとどめて、さらにイライラしない、人に優しい行動をうながすものだ。「イライラしないで優しさを持つ」ことの有用性や汎用性に皆んなが気づけば、人類の未来も明るいだろうし、明日の職場での人間関係も良くなるのだと思う。

 


 

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