八日目の蝉 〜 子どもの非行を防ぐためのブックレビュー
非常に切ないお話でした。
親にとって子どもがどんなにかわいい存在なのか、子どもというのがどんなに愛らしい存在なのか、子を思う親がどんなに一生懸命なのか。
だけどそれと同時に、親というのはどんなに不安定な存在なのか。子どもの近くにいて子どもを導く存在と言えど、未熟で、一貫性がなくて、すぐに流されて。
希和子がベッドから赤ん坊を初めて抱き上げた状況から始まるのですが、そこから一気に深く引き込まれた感じです。赤ん坊の描写が、かわいいのに切なくてリアリティがあって。
「赤ん坊は〜笑いかけていた。茶化すみたいに、なぐさめるみたいに、認めるみたいに、許すみたいに。」
1章の終わりの部分にもやられました。初めてこのお話を読んだのでストーリーは知りませんでしたが、なんとなくいつか悲劇になるんだろうなと思っていました。だけど、危なくなる度に希和子がスルリスルリと抜けることができて。
一瞬、「読んでいてこのまま逃げ切ることができる?」と思ってしまいました。けれども次の瞬間、目の前が真っ白になるようで。希和子を助けたくて、本の中にでも入っていきたい気持ちでした。
薫と希和子で幸せになって欲しかったです。一章が終わる直前の、薫が希和子に抱かれて笑うところの描写が泣けてしょうがないです。あのままどこかに行けたらどんなに良かったか、どんなに幸せだったろうか。逃げる心配がなくなって、落ち着いて暮らせる場所が確保できて、薫が小学校にも上がれて。
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