子どもの非行を防ぐのに、どうして抽象化思考が有効なのか(後半)

2018.07.04 (水)

前回からの続きで、主観から客観への変化を3つに分けて詳しく説明します。

 

「間違っているのは自分かもしれない」

古代ギリシャの哲学者であるソクラテスは、「無知の知」という名言で有名です。知らないことを知っていることが重要であるというのです。知らないことを知らない人間・自分は知っていると思い込んでいる人間がたくさんいる中で、ソクラテスは知らないことを知っている。自身が無知であることを自覚していました。それゆえにソクラテス以上の賢人はなく、「自分が無知であることを知っている」が故に、ほかの人間よりも優れている、と言われていたのです。

 

 

「自覚」に関しては、3つの領域があります。一つ目・一番中心にあるのが「知っている」領域。ソクラテスの言葉で言えば、知の知です。これは、勉強して知識を詰め込んだ状態です。例えば、私はTOEIC500点です。ですから、TOEIC500点ほどの知識が自分にはあることを知っています。

 

 

二つ目が、「知っている」領域の外側にある、「知らないことを知っている」領域。ここが、無知の知です。知っていることを知らないと、自覚していることです。例えば私には、医学の知識がありません。私は、自分には医学の知識がないことを自覚しています。

 

 

そして三つ目が、「知らないことを知らない」領域。これは「知らないことを知っている」領域の外側に広がっており、無限です。この領域には、自分に自覚のないものが全て含まれます。ですので、何がどのくらい、この領域にあるのか、自分で理解することは不可能です。

 

 

例えば、粗暴な人間にも二種類います。自分が粗暴だと自覚している者と、自分が粗暴だと自覚していない者です。どっちがよりタチが悪いかは、説明するまでもないと思います。粗暴という自覚がなければ、その粗暴行為はどんどんエスカレートし、とどまることを知りません。「自分は粗暴だ」という自覚があれば、いずれ粗暴行為にも限界がやってきます。「自分が粗暴だ」「自分は他の人間よりも暴力的だ」と自覚している中での粗暴行為は、いつまでも続けられるものではありません。自覚は、ストッパーの役割を果たすのです。

 

 

酔っ払いにも二種類います。「酔っ払ってねーよ!」とくだを巻く酔っ払いと、「自分、酔っ払ってしまいました」と酔いの自覚がある酔っ払い。どっちの扱いがより面倒かは説明するまでもありません。自分が酔っ払っているとの自覚があれば、「いつまでも迷惑をかけていられない」という自制が働きます。自覚がなければ、「おかしいのはお前の方だろう」などと、あくまでも自分はスタンダードだというスタイルを崩しません。

 

 

自覚とは、三つ目の領域のものを、二つ目の領域に持ってくる事でもあります。自覚ができれば、あとはその気さえあれば自ずと知識は入るものなので、この自覚することが、何事も一番の山場になります。

 

 

自分とは違う意見・違う価値観の人間を前にしたときに、最初から相手を拒否するのではなく、「この人は、自分が見えていない世界を見えているのかもしれない」「間違っているのは自分かもしれない」と思うこと。そう思えるようになることが、抽象化思考のねらいです。

 

 

断絶しないで考えられる

自分事としてとらえられるようになる、という意味です。抽象化の視点があれば、たとえ自分とは違う価値観を持つ人間がいても、そこで最初から否定するようなことはせず、同じ仲間として分かちあう道を探すことができるのです。

 

 

自己中な人間にありがちなのが、線を引いて考える事です。自分と他人の間に線を引いて、「オレはオレ、向こうは向こう」という風に、別物として捉えるのです。自分とは違う価値観を持った人間を、自分とは別物と捉え、同じ仲間と考えることができません。

 

 

大人の社会でも、線を引いてしまうことは頻繁にあります。民間企業でも公務員組織でも、縦横無尽にたくさんの線が組織には引かれています。横には、それぞれの属性を明確にするために、部署を分ける線が入っています。縦には、自分がどの位置かという序列を確実にするために、立場を分ける線が入っています。

 

 

確かに線を入れる意識を持つことは、自分のポジションをはっきりさせるという意味で有効的です。自分のポジションがはっきりすれば、自分の仕事が明確になる、というメリットがあります。

 

 

ですが、線は対立を生みます。線の内側と外側で、区別するようになるのです。内の人間には優しくする一方、外の人間には排他的になります。「向こうのことはウチには関係ねーだろ」「向こうの人間に仕事を回すな」「ウチの仕事はうちで片付ける」など、大人の世界でも頻繁に聞くセリフです。

 

 

 

線を入れて立場で区別するのは実際、犯罪者や非行少年の間でも見られます。線を引くことで自分の立場を明確にし、ハクをつける効果があるようです。犯罪者の代表格であるヤクザや非行少年の世界でも、線を引く行為は見られます。

 

 

ヤクザは上下関係に線を引き、それぞれの構成員の立場を区別します。それぞれの階層が別れており、完全なトップダウンのの組織になっています。それぞれの階層のトップは絶大な権力を振るうのに対し、末端の構成員はトップのためにあくせく働きます。

 

 

非行少年の間でも、線を引くことはよく見られる現象です。彼らは年齢層が広くないので当然、各階層は狭くなります。大人からすれば「年齢が一つ違ったところで何も変わらない」ように見えますが、彼らにとって一つの年齢差はクリアにすべき問題です。なぜなら相手が自分と同じか、一つ上か、一つしたか、によって、取るべき態度が違ってくるからです。非行少年の世界で先輩とは一つ年上の人間であり、彼らの言う「若い奴ら」とは一つ年下の人間なのです。

 

 

寛容的になれる

抽象化の視点が身につくと、寛容的になれます。いい意味でルーズになれるのです。今の世の中は、「●●であれば◯◯あるべき!」「◆◆ならば■■をしてはいけない」という、はっきりとした正解を求める声が多すぎます。

 

 

先日も、ツイッターで「ニューヨークの、スタバでコーヒーを買う警察官」が紹介されていました。「日本でこんなことをやったらダメだろう」という内容で、どことなく「アメリカの警察官はだらしない」という趣旨のものでした。

 

 

ですが、日本の警察官が勤務中にスタバでコーヒーを飲んだらダメでしょうか?公務員が勤務中に自分のお金で飲食物を買うのはいけないことでしょうか?日本の警察官がパトカーでマックのドライブするーを利用するのは、ダメでしょうか?

 

 

公務員、芸能人、スポーツ選手など、有名人に対するこのようなモラルの縛りは、私には常識に縛られて寛容さを失っているように見えます。縛ることは、大きなデメリットを生みます。自由な発想、自然体の考えの芽を、積んでしまうのです。

 

 

正解はありません。一見間違っているように見えることでも、一歩引いてみれば正解になりえます。子どもは時間にルーズです。時間どおりに生活するように言っても、なかなか時間どおりに生活しません。朝は起きないし、ご飯はなかなか食べないし、いつまでも着替えないし、帰っても宿題をしないし、いつまでもYouTubeをやめないし。

 

 

ですが本来、時間とは人間に合わせて作られたもののはずです。本来は、人間が幸せな生活を送るという目標をタッセルための手段なのです。確かに現代社会において、時間を守らない人は不真面目の烙印を押されます。が、時間に縛られている現代人は、果たして幸せでしょうか。

 

 

いつも時間を気にした生活。時間に追い回された人生、時間どおりであることを任された生涯。味方によっては、子どもは自分の時間を生きている、とは捉えられないでしょうか?一見。子どもは時間にルーズなように見えても、それは時代という情勢に縛られた、一方的な見方なのかもしれません。

 

 

このように、抽象化思考は「主観」から「客観」へ、世の中の違う見方を促してくれる考えです。非行とは自己中の塊です。主観から離れ状況を客観視できるようになること。それが、私が子どもの非行防止のために抽象化思考をすすめる理由なのです。

 


 

 

 

 

プレゼントの無料小冊子を更新しました。「子どもの非行を防ぐための素直な頭のつくり方」です。

 

 

非行に走る子どもは自己中が多いです。頭が固く、自分の価値観に固執しています。周りの人間の価値観や考えを受け入れられず、自分を通そうとします。自分以外の価値観や考えがあること自体が、見えていないのです。自分が正しくて、自分以外の考えは間違いだという先入観から抜けられない状態です。

 

 

子どもは周りから吸収する度合いが強いので、子どもの成長は周りの大人次第の側面があります。「周りの大人が自己中から脱し、素直な頭を持つ事で、接する子どもにも好影響を与えよう」というのが、この小冊子の狙いになります。

 

頭の柔軟性があり、状況や相手に応じて変化できる事。自分だけでなく、相手の考えも認める事ができる事。一つ上から全体を俯瞰できる事。そんな「素直な頭」をつくるための気づきを、この小冊子から得ていただければと思います。

 

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