コペルニクスとプトレマイオスだけじゃない。地動説が常識になるまで(その1〜エラトステネス、アリスタルコス、プトレマイオス)

2020.09.17 (木)

地動説が世の中に受け入れられるまでの物語が面白い。僕たちが、「地球が太陽の周りを回っている」という今でこそ当たり前の宇宙観を信じるようになるまでの紆余曲折の話だ。

 

 

多くの人が、プトレマイオスからコペルニクスへのパラダイムシフトは知っていると思う。天動説を唱えたプトレマイオスに対し、地動説を唱えたコペルニクス。今ではコペルニクスの正しさが証明されていて、多くの人が地動説を受け入れている。けどこのプトレマイオスとコペルニクスという二人の対立の話は、地動説が世の中に受け入れられる様になるまでの、ほんの一部分に過ぎない。……というか、端折りすぎた一部分である。

 

 

古代ギリシャの哲学者たちや数学者たち、エラトステネス、ティコ・ブラーエ、ヨハネス・ケプラー、ガリレオ・ガリレイ。今現在、コペルニクスの地動説が受け入れられているのは、他にたくさんいた天文学者や数学者の研究が実を結んだ結果なのである。

 

 

神話から科学へ

はるか紀元前、地球上の多くの地域では神話が信じられてていた。「この世の中がどのようにつくられたか」という創造神話だ。巨人の血が川になっただの、巨大な鶏が土を置いただの、神々の戦争があっただの。各地で多くの創造神話が、それぞれの地域性に根ざした形でつくられた。

 

 

どれも一つとして同じものはないオリジナルな進化を遂げた創造神話。それら創造神話には2つの共通点があって、超自然的な存在が神話には必ず入っていたこと。それと創造神話は信仰の対象であり、権威的で、疑問を呈することが許されなかったということ。

 

 

そこに風穴を開けたのが、古代ギリシャ人だった。いわゆる哲学の始まりである。どうして古代ギリシャの地で哲学が生まれたとされているのかというと、それは彼らが、超自然的な仕掛けや神に頼ることなく、世の中を説明しようとしたからだ。「月も星も、天界に空いた穴なのではないか」と説いたり、「地球から可燃性のガスが出ていて、それが発火して太陽になるのではないか」と説いたり。身の回りにあるものだけで、自然現象を説明しようとしたのだ。

 

 

これは、権威にこびない自由な風潮があったからとされている。信仰の対象である創造神話を批判し、比較し、改良し、そして捨てることができる気ままな雰囲気が、科学(哲学)を生んだのだ。

 

 

地球の大きさ、月と太陽の大きさと地球からの距離

エラトステネスは紀元前300年〜200年頃のギリシャの天文学者・数学者だ。宇宙観の歴史を語るにあたって、彼を除いて語ることはできない。エラトステネスは、地球の大きさ、月の大きさと地球からの距離、太陽の大きさと地球からの距離を測定した人物とされている。

 

 

彼はどうやってそれらを測定することができたのか。現代に生きる僕ですが、テクノロジーがなかったら難しい。

 

 

前提として、エラトステネスは経験上、地球が丸いということはわかっていた。出向した船が水平線に消える時に最後まで見えているのはマスト(帆)だし、月食の時に月の表面に表れる黒い曲線は「地球の影だろう」と想像がついていた。

 

 

地球の大きさを測定できたのは、エラトステネスがシエネという町にある不思議な井戸の噂を聞いてからだ。一年のうちで一日だけ、その井戸には、太陽光が井戸の底を照らす日があるらしい。いわゆる夏至の日である。夏至の日の正午には、太陽が高く登るのだけれど、シエナの街は北回帰線上に位置しているため、太陽がちょうど地表の真上に来るのだ。

 

 

夏至の日の正午、アレクサンドリアにいたエラトステネスは、地面に棒を刺して、太陽光線と棒がなす角度を測った。棒の影を利用したのだ。この時、太陽光線と棒がなす角度は7.2度だったそうである。この角度が、地球の中心からアレクサンドリアとシエネを結ぶ線の角度で、地球という円の360分の7.2だと考えたエラトステネスは、次にアレクサンドリアとシエネの距離を歩いて測った。こうしてエラトステネスは、地球の直径を導き出したのだ。

 

 

次にエラトステネスは、月にターゲットを求めた。月の大きさと、地球から月までの距離を測ろうとしたのだ。図形や数学や、月食日食の天文現象に対する知識が必要なのだけれど、これらの知識はこの時すでにギリシャ人によって明らかにされていた。先人たちの営みを利用できれば、エラトステネスにとっては公式に数字を入れていくだけだった。

 

 

月食の日に、月が欠け始めてから完全に欠けるまでが約50分。これは月の直径の目安である。月が欠け始めてから再び姿を表すまでが約200分。これが地球の直径の目安である。すでに地球の直径をエラトステネスは計算していつので、月の直径は地球の4倍、ということになる。

 

 

月までの距離の計算は比較的簡単で、例えば目と月の間に指先をおいて、指先の爪と月が同じ大きさになるように腕の伸ばし具合を調節する。次にその爪の大きさと、目から爪までの距離を測る。そうすると、月の直径が計算ではじき出せる。

 

 

次に太陽だ。太陽の大きさと地球から太陽までの距離。これは、紀元前5世紀のアナクサゴラスと紀元前3世紀のアリスタルコスという二人の人物による宇宙観がエラトステネスを救った。まずは太陽までの距離だけれど、これは半月の日に解決された。月が半分に見えるのは、月と太陽と地球が直角三角形の形になっているからだと仮定し、半月の日に地球と太陽、地球と月を結ぶ2本の線がなす角度を測った。それから三角法で、地球と月の距離と、太陽と月の距離との比を求めた。すでに地球から月までの距離はわかっていたので、これで太陽までの距離が計算できる。

 

 

太陽までの距離がわかれば、また指先をつかった方法で、太陽の大きさを測ることができる。

 

 

こうして地球の大きさ、月の大きさと地球からの距離、太陽の大きさと地球からの距離はそれぞれ測定され、天体の運行について想像をめぐらせるための土台が作られたのだ。

 

 

果たして地面(地球)は動いているのか

「地球が太陽の周りを回っている」という宇宙観は古代ギリシャにすでにあり、この宇宙観を仕上げた人物として、アリスタルコスの名前が残っている。けれどこの考えが当時、広く受け入れられることはなかった。なぜなら「地球が動いているなんて、直感に反していて馬鹿げているから」である。

 

当時世間に受け入れられていた宇宙観は、「地面(地球)は動かず、太陽や恒星など、他の天体が地球の周りを回っている」というものだった。それには3つの理由があって、まずは「地球が動いているなら、強風が吹いているんじゃないの?」というもの。大地も動いているように感じられないし、すなわち常識に反していたのだ。

 

 

次に古代ギリシャの重力感と合わなかったこと。物が下に落ちるのは物が宇宙の中心に引っ張られるからであって、地球が宇宙の中心にあるとすると、物が下に落ちるのに合点がいくのだ。

 

 

最後に、恒星がまったく変化しないように見えるからだ。もしも地球が動いているのであれば、視差によって恒星の様子も変わってしかるべきだろう。

 

 

こうした3つの理由により、アリスタルコスの宇宙観は、世間に受け入れられることはなかった。当時の人々は、地球は動かずに他の天体が地球を回っていると考えたのだ。他の天体が地球の周りを回っていると考えれば、これらの問題も解決できたのだ。

 

 

ただ、一つだけ説明が難しい現象があって、それが惑星の逆行運動だ。パーフェクトなはずの宇宙に、ふわふわと変な動きをする星がある。これをどう説明するか、という難問があり、これをうまく説明したのが、2世紀ごろに活躍したプトレマイオスだった。

 

 

星の逆行運動をどう説明するか

プトレマイオスは、惑星の逆行運動を、周転円を使って説明した。周転円とは遊園地にある回るティーカップのような動きを言い、道円上をさらに回る円のことをいう。この周転円でプトレマイオスは、惑星の逆行運動を説明し、天動説を養護したのである。

 

 

ただし、プトレマイオスの宇宙観は極めて複雑だった。天体運行の測定結果と自身の周転円を使った宇宙観の整合性をとるために、一つ一つの惑星の周転円の大きさや速度を変えていったのだ。天文学を勧めた13世紀のカスティリャの王アルフォンソ13世は、「もしも全能なる神が天地創造に取り掛かる前に私に相談してくださっていたなら、もっと簡素な体系をお勧めしただろうに」と語ったと伝えられている。

 

 

もしも太陽が宇宙の中心だと考えた場合、地面は動いて風が吹くことになるし、物は下に落ちるし、恒星の視差も無いし。だけど地球が宇宙の中心だと考えた場合、常識に即しているし、恒星の視差がないのも恒星が静止していると考えれば問題ないし、惑星の逆光も説明できるし。世の中のスタンダードは地球中心の宇宙観だった。

 

その2へ続く

 


 

 

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