キャンパスライフがよみがえる〜砂漠

2019.10.18 (金)

 

「何やってるんだバカヤロー」

「何度、同じことを言わせるんだ」

「ミスばっかしやがって」

 

 

社会に出て働き始めると、実に色々な罵声を浴びせられることになる。私もそうだった。社会人になってから何回かの転職を経験しているが、初めの会社での3年間ほど自分にとって黒歴史だったものはない。それまでの自分はあまりにも社会を知らなすぎた。「社会を知らないこと」が、いいことでも悪いことでもない。文字通り。それまでは、ただただ社会を知らなかったのだ。

 

社会というのは厳しいところ。

仕事ができない人は置いていかれる。

世の中には仕事ができる人とできない人がいる。

 

そんなことは頭では分かっていたが、体では分かっていなかったのだ。どことなく他人事として考えていたのかもしれない。それともやはり、「自分は仕事ができる方だ」と根拠もなく考えていたのかもしれない。自分には社会の厳しい風が当たらないと思っていたのかもしれない。新社会人に対する、新入社員に対する、仕事ができない人間に対する対応は、あまりにも厳しかった。

 

 

新社会人での初めのあの3年間が、良かったのか悪かったのかはわからない。嫌な思い出、という意味では悪かったと思うし。世の中を知る機会になった、という意味では良かったとも思うし。どちらにしろ、あの新社会人としての3年間がどん底だったのは、その直前にとても楽しい時期があったからだ。

 

 

「大学生活」

 

 

キャンパスライフという名の、人生夏休み、遊園地、オアシス。この4年間のことを悪くいう人はいるし、無意味だと嘆く声もわからなくはない。実際に私も、最近まで「意味がなかったんじゃないか」と後悔していたところだ。というのも、世の中を見渡せば大学生活に対する批判がそこかしこにあるからだ。

 

 

大学の4年間では、もっと自分が成長するようなことをしていれば、社会に出てからも楽だったのではないか。「働く」ことの前哨戦として、もっと自己分析をして自分の傾向を分かっていたり、自分のことを分析していれば良かったのではないか。社会に出て、社会人になることを学生のうちからかじっておけば、ダメージは少ないし、あわよくばうまく社会で戦える強みをつかむことができたのではないか。

 

 

確かに大学の4年間は、無駄とも思える期間なのかもしれない。ろくに講義にも出ず。出たとしても真面目に講義を聞かず。異性にうつつを抜かし。さらにはアルバイトや友人との付き合いで、ゆっくりとした時間もない。大学の授業料はバカ高いので、家族にとって大きな負担にもなる。

 

 

けれど、けれど。それでもあの大学の4年間には、何か特別な意味があったのではないかと、この本を読んで思ってしまう。無駄とも思える、バカとも思える、あの4年間。今思えば、あっという間に過ぎてしまった、あの還らざる日々。「砂漠」を読むと、もう戻ることができないあの4年間が、いかに楽しかったのかが思い出される。というのも、主人公やその周りの友達に嫉妬してしまうからだ。青春を謳歌し、笑い、泣き、一瞬の出来事がかけがえのないものとなっている。そんな登場人物たちに「いいなあ」と思ってしまうからだ。

 

 

あれから数十年が経ってしまったとはいえ、この本を読んで「いいなあ」と思うような体験を自分もしていたのだと思うと、あれはあれで意味があったものだと思えなくもない。「自分にも青春時代があった」という当たり前で、なんでもないこと。それが人生の幅を広げていてくれたのかもしれない。遠く離れた小島。海に浮かんでいて、とてもとても陸続きになっているとは思えない。今は社会の中で必死になって戦っているけれど、確かにあの時は、遠く離れたあの小島と陸続きになっていたのだ。

 

 

子育てに追われ、仕事に追われ、人生観に追われ、とてもとてもゆっくりと思い出している暇もない。かかってくる敵を倒すことでいっぱいで、伸びに伸びる草を刈るのに精一杯だ。けれど、倒れずに戦っていられるのは、諦めずに草を刈り続けることができるのは、「自分もあの4年間を過ごした」という余裕、繋がり、思い出があるからなのかもしれない。

 

 

「無駄に過ごしたなあ」とよく思うし、もう遥かに昔のことで、忘れている部分がほとんどだ。いまだにつながっている友人も稀有だ。が、今しっかりと地面に立って前に進んでいる自分を思うと、常にそばにあったとも思える。あの時の4年間が、地肉になって自分についている。見えないし、分かりづらい、人から誤解されやすい、が、大きくて強力な武器になって自分を支えてくれている、とも思う。

 

 

この本を読むと、かつての青春が目の前によみがえってくる。親元を離れた新幹線。新しい生活を始めた町。目標にしていた一人暮らし。新世界のキャンパス。次々と現れる知り合いや友人たち。大学の講義。アルバイト。将来への不安。卒業、就職。

 

 

ただただ「意味がなかった」と片付けるのではなく、考え直してもいいのかもしれない。何が無駄だと思えるのか。なんでこんなにも、いつまでも引っかかるのか。どうしてあんなのにも楽しかったのか。読んでいると、年甲斐もなく容姿が気になって鏡を見たくなる。「少しだけ若返ったかな」と思わせる。

 


 

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警察官が、イライラの感情という素朴で身近な、ともすれば大きくなりがちな分野で語ることはないのではないでしょうか。というのも、警察官は感情をなくして機械的で形式的な仕事をする人間だし、そうであることが求められがちな職業だからです。この本では、元々警察官をやっていた人間が、その時の経験を元に、実は警察官に身近な感情であるイライラについて、そのイライラをなくす考え方を紹介します。

 

 

実は、警察官にとってイライラというのは、最も身近な感情です。というのは、警察官がイライラの矢面に立つ仕事だからです。

 

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