「先生はイジメをしないものだ」という社会的価値観〜最強のニーチェ

2019.10.19 (土)

 

「女は家の中で家事をし、男は外に出て稼いでくる」

「子どもは親の言うことを聞くものだ」

「新入社員のうちは、言われた事を疑わずにひたすら仕事に打ち込むべし」

 

 

などなど、世の中にはたくさんの社会的価値観があるわけで、最近の流れだと、この社会的価値観を疑いましょうというのがトレンドになっていると思う。本屋に行って自己啓発系の本を開いてみれば、「常識を疑え」という文句を書いていない本を探す方が難しかったりする。

 

 

もちろん、この「常識を疑え」とか「社会的価値観を疑え」という言葉は昔からあったものだろうし、いつの時代もそう考えていた人はいたはずだ。けれど、最近は特にこの言葉を見聞きする機会が多くなった気がする。SNSによるコミュニケーションが頻繁になっている世の中だからだろうか。

 

 

だがそうは言っても、「実際に世の中の人が社会的価値観を疑うようになったのか」とか「常識を疑うことが、広く受け入れられる世の中になったのか」というと、そうではない。相変わらず世の中のマイノリティーに対する視線は厳しいし、自分と馴染みのない人を目の当たりにすると「なんだこの人は」と誰もが思ってしまうだろう。

 

 

どうあがいたって、人間が何年も生きていれば「常識」というのは一人一人の中に作られるものだし、その自然と作られた常識の外側からやってくるものを受け入れることが、「常識を疑う」だったり「社会的価値観を疑う」であるのだ。

 

 

以前、「聖域なき構造改革」なんて言葉が流行った、というか、時の政権がそんな言葉を言っていたことがあるが、聖域というのは、いつの間にか作られているものなのだ。いくら「聖域なき」なんて言っていても、勝手に聖域はできる。なのに、「自分は聖域を作っていない」と思っている人が、(自分を含めて)なんと多いことか。いくら「常識を疑え!」「社会的価値観を壊せ!」と声高に叫んでいても、当の自分が聖域を築いていることに気づいていない。

 

 

自分以外の人間には、「もっといろんな人がいる事を認識しなくちゃ」「世界は広いからいろんな人がいるんだよ」「自分が思っている価値観だけが全てじゃないよ」と言っておきながら、自分が自分の価値観にすがっていることに気づいていない。おそらく皆んなが皆んな、「これだけは譲れない」というものを持っている。

 

 

昔、某アイドルが主演している「武士の一分」という映画があったが、これは「武士にとっての譲れない最後の一線を超えたものには容赦しない」という内容だったと思う。武士のいない現代の日本でも、一分を持つことが大事だと思っている人がほとんどだと思うし、それがあたかも軸があって格好いい人のように思われている節もあるのだろう。

 

 

けれど言ってしまえば、その一分こそが、壊さなければならない社会的価値観であって、疑わなければならない常識なのだ。改革をしなければならない聖域とは、まさにその一分のことなのだ。

 

 

「子どもを導く教育者たる者の世界にイジメがあってはならない」

 

 

そんな聖域を、多くの人が持っているのではないだろうか。もちろん、神戸の小学校での、先生間でのイジメの話だ。「大事な子どもを預けるのだ。先生にはちゃんとした人がなってもらわないと」などと、甘い事を考えてはいないだろうか。

 

 

以前イジメが社会の話題になって、散々ニュースで取り上げられていた時があったが、その時にどこかの専門家が言っていたと記憶している。「イジメをなくすのではなくて、イジメがある事を前提にして、そこをどう生き抜くかを考えなくてはならない」と。

 

 

この専門家の言葉は、何も特別なことではない。誰もが同じような事を考えているだろう。「どこにでもイジメは存在すること」「どんなに頑張ってもイジメは無くならないこと」「イジメのない社会なんてないこと」なんて、そんなことは誰もが分かっているはずだ。

 

 

もしも「先生の世界にイジメはない」と思っていて、「先生がイジメをしているなんて、もってのほかだ」と思うのであれば、先生の社会を、聖域だと妄想しているのではないか。先生とは、特別な人がなるわけではない。自分たちと同じように生まれ、自分たちと同じように人生を経験した人たちがなるものなのだ。一職業でしかない。蓮から生まれたお釈迦様が先生になるのではないし、慈悲の心しか持たない仏様が先生になるのでもない。確率的にいって、例えば小学校の時のクラスの中の一人くらいは、教員という道を選んでいるのではないか。イジメを受けたことがない人などいなく、イジメをしたことがない人などいない。「教員になった」などの転機があったからといって、急にイジメから離れらるものでもないだろう。

 

 

こんな意見を持つ人もいるかもしれない。「先生としての自覚が足りない」とか「教員としての認識が足りない」とか。けれどそのような人は、どんなに立派な自覚や認識を持って仕事に打ち込んでいるというのか。おそらく、自分が他人に対して思っていることというのは、自分が他人から思われていることでもあるのだ。

 

 

レストランやカフェでマナーの悪い人間に対して嫌な思いをする時があるだろう。そんな時は、自分も他人に対してマナーの悪さを感じさせるような言動をしていないか、我が身に当てはめてみる人がほとんどだと思う。そんな時に、「自分は100パーセント大丈夫」と言える人がどれほどいるというのだ。おそらく「100パーセント、自分はマナー違反をしていない」と言い切れる人はいないだろう。マナーの悪い客を見た時のように、特別な体験をする機会でもない限り、自分の客観的な姿というのは見えないものなのだ。自分が他人に対して思っていることというのは、自分が他人から思われていることでもあるものなのだ。

 

 

「社会から押し付けられた架空の価値観」にとらわれないことが、ニーチェの哲学の要点の一つだと思うが、神戸の先生間のいじめ問題を受けて、「先生がイジメなんて信じられない」と声をあげている人たちは、まさにとらわれているのではないだろうか。決してイジメを肯定するわけではないし、イジメはがある事には心が痛いが、イジメなんて人間が二人以上いれば、どこにでもあるものだろう。それなのに「相手が先生」であれば、あたかもそこが聖域であるかのような言い方をする。そこが一分であるかのように認識しようとうする。「社会から押し付けられた架空の価値観」を、もう一度考えなくてはならない。

 


 

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