争いごとと向き合う警察官は、野生動物を身近で見る機会を得た動物学者のようだ
警察官になって、「何がいいのか」「何が良かったのか」というと、イライラの矢面に立てることだろう。人間の、一番嫌な部分に立ち会うことができる。これが警察官になって、一番私が得をしたところだ。一番嫌な部分、それは怒りの感情だと断言できる。イライラ、怒りっぽさ、感情的な性格、攻撃性。日常の中のこのような負の感情に相対することが警察官の仕事であり、そんな負の感情に付き合うことが、警察官の仕事の魅力である。というのも、この負の感情というのは、あらゆる厄災の諸悪の根源だからだ、日常の中のものであれば、まだ規模も小さいさだろう。家庭内での喧嘩、ご近所同士の争い、職場でのトラブル、学校でのいじめ。まあ、これらが「規模が小さい」といっても、当の本人からしてみれば自分のことなので、決して小さいこととして片付けられることではないだろうが、少なくとも自分の身の回りで起きていることに違いはないだろう。
これらの規模が大きくなると、戦争だったり紛争だったり、となる。まあ、争いの姿勢、というわけだ。規模が大きくなっても、規模が小さくても、争いの姿勢というのは、見ていて一番酷い。おそらく、イライラしている当の本人は、自分がどんなに酷い態度を取っているのか、自分でわかることはできないだろう。新幹線の中に座っていては、新幹線の見た目はわからない。家の中にいたのでは、どんな家に住んでいるのかはわからない。客観的な視点というのは、当事者ではわからないものなのだ。イライラしていることが、どんなに酷いものか。争いの姿勢というのが、どんなに厄災を放っているか。それというのは、イライラの渦中にいる当事者たちには決してわかるものではないだろう。外側からしか見ることができないのだ。
そんな、イライラを客観的に見る機会を得られるのは、警察官という職業の特権だろう。確かにイライラを間近で見る機会のある職業というのは、他にもある。争い事を解決する弁護士や裁判官などもそうだろう。でもそれらの職業と警察官が違うのは、警察官とはあくまでも最前線にいる、ということだ。町中に、社会の中に、生活の中に、警察官というのは入っているのだ。争いの巣の状態、出来立てホヤホヤの状態を、見ることができる。
法廷で争い事をすることもあるだろうが、それというのは、出来立てホヤホヤの争いではない。お互いに準備して、用意して、対策を考えて、「こういう態度で行こう」とか「こういうスタンスで望もう」というのを持った後でのことだ。お互いにすでに、武装してしまっているのだ。
それに対して警察官というのは、生まれたてのイライラを見ることができる。まだお互いに武装する前の状態。すの状態、着飾る前のイライラの状態だ。そこにあるのは、理論的なものではなく、ただただ純粋な、湧き上がる感情なのだ。理由なんかない。湧き上がるから、自然発生するから、もうそこにあるから、そこにあるのだ。理路整然とした道筋があってのイライラなのではなく、ただただ心の中の奥深くに湧き上がってきた、「相手を憎い」と思う気持ち。それが、着飾る前のイライラというものなのだ。
このイライラを、間近で見る機会がたくさんあるのだ。具体的な例をたくさん見ることができる。この怒りの感情というのは、本で読んだり人から聞くものではなく、警察官の今、目の前で繰り広げられている争いである。今目の前で現実に怒っている争いを、間近で見ることができるのだ。イライラという生々しいサンプルを、そのすぐ隣で、見ることができる。
もしも動物学者がいたら、野生動物を文献を通してではなく、生で、しかも間近で見たいと思うだろう。だがそう簡単にはいかない。野生動物と接触できるのは、タイミングもあるのだ。遥か遠いアフリカの地に赴いて、何日間もサバンナを車で移動して、やっと目当てのライオンなりゾウなりキリンなりに会うことができたら、その動物学者は、大喜びに違いない。貴重な存在を間近で見ることができる。そんな機会は普通、めったにあるものではない。
海洋生物学者だって、もしも「クジラやシャチを生で見たい」と思ったとしても、簡単に見られるものではない。外国まで移動して、そのあとはボートに乗り換えて。装備だって、準備だってあるだろうし。連れて行ってくれる現地のガイドだって必要だろう。運だって必要だ。ボートで海洋に出たからと行って、必ず見つかるというものでもない。もしもクジラの群れに会うことができたり、大洋を泳ぐシャチに会うことができたら、その学者は大喜びだろうし、その学者の人生にも貴重な経験になるだろう。
そんな貴重な経験なのだ。警察官がイライラを間近で見られるというのは、動物学者がゾウを間近で見るのと似ているし、海洋学者がクジラを間近で見るのと似ている。貴重な体験なのだ。そんな貴重な体験を、何回も経験しているのが警察官なのだ。
諸悪の根源、人類の負ともいえるべき戦争の原因でもあるイライラ。そんな貴重なものを、蚊帳の外から間近で見ることができるのだ。これほど、イライラについて客観的な視点を持っている人間はいまい。
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電子書籍で本を出すことになりました。ぜひ多くの人に読んでいただきたいと思います。タイトルは、「人に優しくなれる発想法」です。想定されると読者は、主に子ども相手にイライラしてしまうお父さんお母さんですが、仕事やプライベートでのイライラする人間関係が気になっている方にも読んで欲しい内容となっています。
警察官が、イライラの感情という素朴で身近な、ともすれば大きくなりがちな分野で語ることはないのではないでしょうか。というのも、警察官は感情をなくして機械的で形式的な仕事をする人間だし、そうであることが求められがちな職業だからです。この本では、元々警察官をやっていた人間が、その時の経験を元に、実は警察官に身近な感情であるイライラについて、そのイライラをなくす考え方を紹介します。
実は、警察官にとってイライラというのは、最も身近な感情です。というのは、警察官がイライラの矢面に立つ仕事だからです。
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