思いやりを育む方法とは(その3)

2019.09.09 (月)

次に、相手の理解を助ける効果である。これは、「例え話」という形で良く使われているのを目にする。あなたが何か新しい商品、新しい考え、新しい企画、などを他人に説明する際、どのように説明しているだろうか。「例え話」を使わないだろうか。「例え話」とは、相手に近いところにあるものを利用して、説明するものである。「例え話」を利用すると、これから説明する、あるいは今説明している、相手にとっては未知のものが、既知のものになるのである。

 

 

例えば、良く使われる、「人生とは旅である」というフレーズ。人生という、誰にとっても掴みどころのないもの、捉えどころのないものを、誰にとっても経験のある「旅」に例えているのである。ただただ「人生」と言われても、ピンとこないだろう。モヤモヤしていて、「人生とはこういうものだ」というのを考えていても、終わりがないだろう。「生まれた時から始まった、色々な経験をして、親という存在がいて、好きな人ができて、年をとっていって・・」などと、切りがなくなってしまう。どこからどこまで説明したらいいのかも分からないし。そんな時に、「◯◯のようなもの」と例えを持ってきてしまうのである。相手にとっても経験のある「旅」を、人生に例えたのである。旅と人生という一見、遠い存在を、一つにしたのであって、繋がったのである。おそらく、「予想外の色々な出来事が起こる」という点が、一番くっつきやすいのではないだろうか。「予想外の色々な出来事が起こる」という共通点によって、旅と人生を一緒に見ることができるのだ。

 

 

例えば、ファミリーマートのフレーズで「あなたとコンビに」というのがある。これはもちろん、コンビニエンスストアとコンビを掛けているのであるが、文字だけが同じなのではなく、もっと深い意味も含めて掛けていることが分かる。「いつも一緒にいる」という想像を、うまく相手に提起させるものだろう。「ファミリーマートとはどんなコンビニエンスストアなのか?」という説明を、「コンビの様なものです」と、コンビを持ってきて説明しているのである。これによって、「いつも一緒にいて、運命共同体で、ともに泣いたり笑ったり・・」という無限に想像できるものを、簡単に相手に説明できるのである。相手にとってはファミリーマートいう未知が、既知に変わるのである。

 

 

最後に、アイディアを発想する効果である。どんなに新しいアイディアも、既存のアイディアから発想を得たものであることは、誰もが感じるところである。新しい曲を作り出す音楽クリエイターたちも、「曲を聞いたことがない」人はいないはずである。過去に膨大な量の曲を聴いてきた経験があり、それが土台になって、新しい曲を作り出しているのだ。着想を得るという言い方もできるだろう。アイディアのヒントは、連想から来ているのである。

 

 

例えば、何年にも渡って続いている番組に、仮面ライダーがある。仮面ライダーは、連想の連続であり、まさに「連想」という言葉がふさわしい。元々の原作者である石ノ森章太郎は、仮面ライダーを、昆虫のイナゴからヒントを得た。当初はガイコツの頭部を持った正義のヒーロー(これもガイコツから連想しているが)を世に出したかったらしいが、ガイコツへの反発があり、そこで連想を得たのが、イナゴだったそうだ。イナゴから着想を得た仮面をデザインして世に出したところ、これが大ヒット。そして歴代の仮面ライダーは、色々なところから連想されてデザインされている。私の子どもが生まれた頃に、仮面ライダーウィザードがあった。これは魔法使いから連想された仮面ライダーである。魔法使いの雰囲気が、仮面ライダーと繋がったのだろう。アイディアを発想するのには、ヒントや着想が必ずあり、そのヒントや着想から連想されるから、アイディアが出てくるものなのだ。

 

 

というわけで、アナロジーとは連想であり、それは「自分の理解を助ける効果」「相手の理解を助ける効果」「アイディアを発想する効果」が、ビジネスという視点で見た場合に存在する。本当はもっと、数え切れないほどに効果は存在するのだろう。そのくらい、連想は、私たちの生活の中に根ざしている。連想なくしては生活できないほどに、多様なところに使われているのが連想なのだ。

 

 

このアナロジーを、人間関係に応用しようというのが、私の考える、思いやりを育む方法である。思いやりとは、相手の頭の中を連想することなのだ。相手の頭の中という、未知のものを、既知に変えるのが連想である。相手の価値観、相手の立場、相手の視点、相手の好き嫌い。どれも他人からは分からないものだ。だから、想像するのである。アナロジーを使って、相手の頭と自分の頭に、橋を掛けるのである。

 

 

さて、どうやって連想したらいいものか。ここで、アナロジーの基本をお伝えする。「自分の理解を助ける効果」「相手の理解を助ける効果」「アイディアを発想する効果」という3つのアナロジーの効果。これに共通することは何であろうか。この3つは、どうやってアナロジーを発動しているだろうか。どうやって一見、繋がらないものを繋げているのであろうか。

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