イライラをなくし、優しさを育むための理論(その5)

2019.09.19 (木)

次に「相手にうまく説明する効果」である。相手に何を説明する際は、新しい概念なりを説明することが多いだろう。そもそも相手にとっては未知であるから説明の必要性が出てくるものであって、相手が知っているものであればわざわざ説明する必要もないだろう。

 

 

そのような相手に理解を促す際に、何を使うであろうか。例え話を使わないだろうか。例を示して、新しい概念を説明するのである。新しいものを説明してはいるが、「実はあなたの周りにあるものと同じですよ」「あなたの近くにあるアレと同じですよ」と説明するのである。そうすれば、相手にとって、その未知の概念は既知に変わるのではないだろうか。全くの新しい概念でも、近しいものを示されて「それと同じようなものですよ」と言われれば、両者は繋がって、未知の方も既知に変わるのである。

 

 

最後に「アイディアを発想する効果」である。「世の中のアイディアはすべて借り物であって、厳密な意味な意味でのオリジナルなアイディアはない。ゼロから作られたアイディアはあり得ない」とはよく言われることである。だったら、一見、オリジナルなように見えるアイディアとはどこから出てくるのか。新しいものを生み出しているクリエイターは、どこからアイディアを持ってきてクリエイトしているのか。それは、遠いところから持ってきているのである。

 

 

例えば、石ノ森章太郎の仮面ライダー。子どもたちに人気で今でも繰り返し繰り返し放送されている仮面ライダーの初期を知っている人はいるだろうか。一番初め、最初の仮面ライダー。あの仮面ライダーは、モチーフが昆虫のイナゴだというのだ。今でも連綿と続く、仮面ライダーの仮面。あのデザインは、昆虫のイナゴからアイディアを借りてきていたらしい。

 

 

はじめ、石ノ森章太郎はドクロの仮面を被ったヒーローを想定していた。しかし、少年向けのコンテンツという趣旨と合わなかったのだろう。アイディアの元を、ドクロから昆虫のイナゴに変えたのである。当時、石ノ森章太郎の目の前には、「新しいヒーローを作る」という課題があった。その課題をクリアするために、経験、知識、価値観などを総動員させて、「何か使えるものはないか」と探していたに違いない。頭の中で。

 

 

そして、昆虫のイナゴや、ボツにはなったがドクロという素材が上がったのである。どんなに天才でも、アイディアを発想する際には、その踏み台が必要である。その踏み台をどこから持ってくるかが問題なのだ。新しい正義のヒーローということで、当時もうすでに世にあった月光仮面やウルトラマンなど、同じカテゴリーからアイディアを持ってきていたら、それは盗作と呼ばれていただろう。

 

 

正義のヒーローを思い浮かべ世とすれば、おそらくはじめに思いつくのは、同じカテゴリーにある月光仮面やウルトラマンだったのではないか。けれど、同じカテゴリーから連想する正義のヒーローを作ったところで、面白くないし、あからさまに盗作だし、オリジナリティがない。そこで、いかに「遠く」からアイディアを持ってくるかが重要なのである。

 

 

この時、石ノ森章太郎の頭にあったのがなんだったのか、厳密には分からない。けれど、新しい正義のヒーロー、ドクロ、昆虫のイナゴの3者の中で、おそらく共通点を見つけていたに違いない。目が大きいとか。インパクトがあるとか。それは、決して人に説明できるような共通点である必要はない。自分の頭の中でつながればそれでいいのである。たとえ一般的にはお互いに遠い存在であろうとも、全く別のカテゴリーのものとして認知されていようと、自分の頭の中で共通点や似ている部分を見つけられれば、想像の中では近い存在になる。頭の中では、同じカテゴリーに分類できるのだ。

 

 

このように、共通点を見つけるとは、アナロジーを発動することができるのである。目的のものを連想することができるのだ。これを人間関係に応用してみると、すっぽりと当てはまらないだろうか。すなわち、自分の理解のために使えるものを連想すること、相手に説明するために例えから連想すること、新しいアイディアを発想することは、共通点や似ている部分を見つけて、未知を既知に変えようとすることである。自分のバックグラウンドにある経験や知識や価値観を総動員させて踏み台にし、目の前の課題である未知を、既知に変えようとしているのである。

 

 

この構図は、人間関係で言えば「相手の身になって考えること」と言えないだろうか。自分は相手の心情を知ることができない。だから、自分と相手を重ね合わせ、「相手にはどんな風に見えているだろう」というのを想像してするのである。相手の心情という、全くの未知を既知に変えるため、自分のそれまでの経験から連想できるものを持ってくるのである。

 

 

というわけで、妄想スナイパー理論とは、共通点や似ている部分を見つけることによって、相手に対して優しくなる理論である。その理由としては、「相手と仲良くなれる」「一歩引いて見られる」「アナロジーが発動する」の3つである。

 

 

イライラしやすい性格、怒りっぽい性格、感情的な性格。そんなものを自分から抱いている人はいないだろう。誰もがそんな性格になりたくないと思っている。誰もが、人に優しくて、寛容的で、思いやりにあふれた性格になりたいと思っている。そこでこの、妄想スナイパー理論である。もう一度、「共通点や似ている部分を見つける」という当たり前のようで実は多くの人ができていなものを、見つめ直して欲しい。自己中なイライラがスーッとなくなり、相手の気持ちを想像する余裕が出てきたら、この上ない喜びである。

 

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